音声ブラウザ体験記
PART1 視覚障害者の視点からWebページを考える
ユーザビリティとバリアフリー
検索エンジンがらみのネタもつきて、さあ次のコンテンツはどうしよう、最近Webデザイン関連のサイトやメーリングリストでよく目にする「ユーザビリティ」あたりでも取り上げてみようか、と漠然と考えていたとき、たまたま出会ったのが、「ふじひろのホームページ」というサイトだった。このサイト、「視覚障碍者自身の手により作成したホームページ」というのが謳い文句になっており、その中で「ホームページ作成者へのお願い」と題して、目の不自由な人にもアクセスしやすいホームページ作成のポイントが具体的に書かれている。内容についてはこの後、一部を紹介するが、これを見てひらめいたのが「Webユーザービリティを考える上で、"バリアフリー"がひとつのヒントになるんじゃないか」ということだった。
障害者にやさしいWebページはみんなにやさしいWebページか?
筆者は広告関係の仕事を本業としているが、取引先の関係上、住宅がらみの広告を手がけることが多い。そのとき、最頻出単語と言ってもいいほどよく使われるのが「バリアフリー」という言葉だ。床の段差をなくしたり、階段やトイレなどに手すりを設ける、といったバリアフリー設計は、ほとんどのハウスメーカーが基本的な設計思想としてセールスポイントとするところ。そして、そうしたお年寄りや身体に不自由な人のことを考えたバリアフリーの家は、実は若い人や子供にも暮らしやすい、「みんなにやさしい家」なんだというのが、落としどころとなる。まあ、半分は広告表現上のレトリックかもしれないが、半分は真実といっていいだろう。で、これと同じようなことがWebにも当てはまるのではないか、と考えたわけだ。つまり、視覚障害者などに配慮したWebページは、一般の人にとっても見やすく、わかりやすく、使いやすいのではないかと(実際には必ずしもそうは言えないことが後からわかるのだが)。
視覚障害者にとってアクセスしやすいページづくりとは
実際、視覚障害者がWebの現状をどうとらえているか、「ふじひろのホームページ」の管理人である山口さんのご厚意により、同サイトから引用してみよう。まず、
視覚障碍者がインターネットにアクセスできることで、さまざまな情報の受信や発信、検索、メール、ショッピングなど、趣味や必要な情報が入手できるようになりました。
と、とりあえずは現状を歓迎しているが、同時に
昨今のホームページの多くが、動画や画像を取り込んだビジュアル志向のページ作りをしていることで、せっかく目的のページにアクセスしたのに、音声ブラウザでは全く内容を確認することができないと言う状況が増えています。特に、視覚障碍者の多くが音楽(映像も含む)系のページに関心を持っているのにも関わらず、肝心な音楽系のページは、ビジュアル系のページ作りをしているので、容易に利用することができません。
と嘆く。また、
せっかく資料やデータ、電子本などをダウンロードできてもPDF形式のファイルになっており、音声では読むことができません。音声で快適に読めるデータは、テキスト形式のファイルなのです。
という指摘も興味深い。
その上で、「音声ブラウザでも閲覧しやすいページ」にするための、すなわち「アクセスしにくい、読みにくいページを作らない」ためのポイントとして以下の5つを挙げている。
1. リンクに、フレームやマップ、画像を多用しない
2. フレームやマップを使う場合、その近くにテキスト版のメインページへのリンクを付ける
3. 画像には、代替テキスト(ALTタグ)を付ける
4. ページ作成時、JAVAスクリプトは、使わない
5. 掲示板、アンケートやショッピングの記入項目フォームは、なるべくCGIで
画像のALT属性などは、HTMLについて書かれた文章を読むと有無を言わさず「必須です」となっていたりするが、そうしなければならない理由のひとつが音声ブラウザ(あるいはテキストブラウザ)での閲覧時に配慮するため、というのはなるほど説得力がある。
それにしても、視覚障害者にとってアクセスしやすいページとは、イコール、音声ブラウザでも閲覧しやすいページであるわけで、ここはぜひとも音声ブラウザなるものを体験してみないことには話が始まらない。そこで、公共機関で音声ブラウザを利用できるところはないかいろいろ調べてみたが、結局、IBMの『ホームページ・リーダー』というソフトの体験版をネット上からダウンロードできることを知り、試してみることにした。